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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

「え……、なんで……」


 あたしの視界に、あるはずのものがない。


「なんでうちがないの!?」


 そんなことがあるなんて!!


 震え上がったあたしは、悲鳴のような細い声を上げた。


「まさか……」


 あたしが記憶していた実家もまた、記憶違いだというのだろうか。

 あたしの実家はどこ? あたしはどこで育ったの?

 だけど隣の家の記憶は、うっすらとあるのだ。壁の色が違うけれど、三叉路渡ってすぐのこの三角屋根は記憶がある。いつもうちを説明する時は、この三角の家の隣と言っていて。目印にしていたはずで。

 だけどうちがないなんて。

 あたしの記憶ってなんだ。なにが正しいんだ。正しいものなんてあるのか。朱羽も、朱羽すらも……あたしの記憶とは違うのか。

 朱羽があたしから離れないというのは、あたしの願望から見せた都合のいい幻覚なんじゃないだろうか……。

「陽菜、混乱しておかしなことは考えてないね?」

 朱羽があたしの両手首を掴んで、あたしを見た。

「あなたの記憶のすべてがおかしいわけではない。俺は、ここにいる」

 掴んだ手を、彼の頬に触らせる。

 その顔は真剣なもので、力強い眼差しが、不安定に揺れるあたしを朱羽の側に居る者だと縛る。

「俺は自分の意志で、あなたの傍に居る。あなたの記憶そのものだ」

 あたしの目から、ほろりと涙が零れた。

「あなたは十年も実家と連絡をとっていないんだ。もしかして、どこかに引っ越ししているのかもしれない。むしろそう考えた方が自然だ」

「それなら、連絡くらい……」

「ねぇ、ふと思ったけど……あなたは、自分の家の住所や電話番号を、家に知らせてあるの?」

「え? そりゃ当然に……」

 あたしは眉を顰めて、口を噤(つぐ)んだ。

 自宅用の電話は、スマホの電話番号だけを使用している。そしてこのスマホは、今年の三月から十年割引が適用になったと通知が来たはずだ。

 記憶違いではないことを確かめようと、あたしはスマホを取り出して、料金請求画面を見てみた。ここに電話会社から割引適用の通知が書かれていたはずだ。

 ある。これは正しい記憶だ。
 
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