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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon

「ここのお隣、鹿沼さんはどうなされたかおわかりですか?」
「鹿沼さん? ああ、ごめんなさい。うちがここを買った時にはお隣はもう土地だったので、前の住人がどうなされたのかは……」
「実はここに住んでいた鹿沼さんを探しているんですが、あなたはいつ、ここをお求めに?」
「ここを買ったのは、十年前だったけれど」
「十年前!?」
あたしと朱羽は顔を見合わせた。
十年前は、あたしが東京に出た時だ。
あたしが東京出た後に、家族は引っ越したというのだろうか。
「……参考になるかしら。実はそこの土地、事故物件だったの。それでほぼお隣の土地込みのお値段で、この家を買ったの」
「事故物件?」
「ええ。なんでもそこのご夫婦が自殺したと、不動産屋から聞いたけれど。それで建物を壊したと」
「じ、自殺!?」
引っ越したわけではなく、自殺!?
「それはなんで……」
「そこまではわからないけど……。そうだわ、山瀬さんのお宅がもう二十年近く住んでらっしゃるはずだから。ちょっと聞いてみてあげるわね」
それでその奥さんは、子供を背負ったまま向かい側にある三軒奥隣の家の階段を上がり、チャイムを鳴らす。
山瀬さん……?
あまり近所のことは覚えていない。
「あら、お留守だわ。でも十年以上住んでいるのは山瀬さんしかいないし。困ったわ」
あたしはバッグの名刺入れから名刺を取り出した。
「あたし、その事故物件とされるところに住んでいた、鹿沼陽菜と言います。実家がどうなったのかわからないので、知りたいんです。もし山瀬さんが帰ってきたら、奥様でも山瀬さんでも構いません。ここに記載されているあたしの携帯番号に電話頂けますか? お話を聞きたい。今あたしは出張で来ているので、あまり長くこちらにいれないんです」
「あなた……娘さんなの?」
少し気の毒そうに奥さんはあたしを見る。
「はい。なんで自殺になったのか、妹はどうなっているのか、それを聞きたいと思うので、お手数をおかけしますがお電話下さい。どうしても知りたいんです」

