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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 


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 自殺という嫌な単語が頭にぐるぐる回り、どうしてあたしは十年もそれを知らずにいたのか、自責の念に囚われていた。

 電話を一本かけてみてみれば、繋がらないことに違和感を感じたはずだ。

 だけどあたしは、N県の思い出すべてを考えないようにしていた。

 そして実際N県に来てみた途端、知らないことばかりで。

 わかっているはずのものも、突き詰めて考えれば、実を持たない。虚ばかりがあたしの記憶に残っている。
 
 あたしが倒れそうになっているのを見兼ねて、朱羽が近くにあったファーストフード店にあたしを連れ、温かなココアを注文してくれた。

 あまりひとのいない1階の日当たりのいい窓際で、飲み物を飲んでほっと息を零したあたしを、朱羽はじっと見ている。

 そして言った。

「陽菜、誰か知っている高校の教師の名前は? 出来れば担任の名前」

「担任は……、咲川先生だけど」

「すぐそれは出るんだね」

「うん、そうだね。するっと出たけど」

 朱羽は少し考え、そして言った。

「妹の千紗ちゃんは、あなたの高校?」

「うん。ひとつ下」

「だったら、咲川先生は他の教師から千紗ちゃんの行方の情報を知っているかもしれない。もしかするとご両親のことも」

「え?」


「咲川先生に会いに行こう」

 朱羽は厳しい面持ちで言った。


「もし嫌なら、俺だけが聞きに行ってもいい。どうする? ここで待ってる?」

「一緒に行く。あたしは知らないと駄目だわ。今まで放置していたんだから、それは娘としての責任よ」

「……陽菜。もしかすると満月は――」

「なに?」

「いや、はっきりとしたら言う。今の段階は嫌な推測でしかないから」

「いいよ、言って?」

「いや。多分、咲川先生に会うことが出来たのなら、そこで大体がはっきりすると思う」

 朱羽は悲壮な表情で、アイスコーヒーを飲んだ。

 聡い彼には、どんな推測が成り立っているのだろう。

 
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