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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon

扇谷高校前――。
時刻は午前11時前。
咲川先生がいることは、朱羽が扇谷高校の電話をネットで探して、実際かけて確認してくれた。
今は教頭になっているらしい。
いることを確認して、いざ突撃!!
造りはなんとなく思い出せるのに、初めて校舎に立ち入った時のように、妙に落ち着かない心地になりながら、朱羽と教員室に向かう。
すると廊下で、ひとりの女性教員とばったり会う。
肩までのボブに、大きな目が特徴的な小柄なこの女性。
たしか――。
「あ、小山内先生!」
咲川先生と同じように、またもやするりとその教師の名前が口に出た。
「え?」
「十年前、ここに居た鹿沼陽菜です。先生の新任早々、うちの3-Bで英語教えて下さいました。"小山内ちゃん"って呼ばないでってよく怒ってて。あたしの推薦対策のための英語の作文、個人的に補講して教えて下さいました」
「ああ。あの鹿沼さん!? 元気だったの!?」
「はい! 今日はちょっと……」
色々なところから視線を感じるのは、となりの朱羽か。
生徒も教師も、この小山内先生も朱羽を見ている。
むっとする。
朱羽を隠さなきゃ!
あたしは朱羽を身体で守るようにして、朱羽を壁におっつけながら、言葉を続けた。
「今日は十年ぶりに近くに来たので、咲川先生に会いにきたんです。今は教頭先生なんですって?」
「そうなの! きっと喜ぶわ、教頭。今でもあなたのことと、妹さんのことをよく口にしては嘆いていたから」
小山内先生を先頭に教頭室に歩き出す。
「……嘆く?」
「そりゃあ。痛ましいことの連続だったから」
「え? 痛ましいことって? 親の自殺?」
「それもお気の毒だったわね」
「それ"も"ってなんですか!?」
いつの間にか目の前に教頭室のドアが見える。
「だって鹿沼さん、"あんなこと"がなければ、ここを卒業出来ていたのに」
「はあ!?」
――お前はそこを卒業していない。
コンコンコン。
小山内先生がドアをノックする。
そしてドアを開ける。
「教頭。鹿沼さんが会いに来てくれたんです!」
朗らかな彼女の声に、机から立ち上がった男性もまた朗とした声を上げた。

