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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon

咲川清志――。
あたしの記憶に間違いなければ、今年48歳になる元日本史教師だ。
「鹿沼……、鹿沼陽菜か!?」
……間違いない。記憶と違うのは、髪の薄さだけだ。
変わらない馬面。あのサッキーだ。
「先生、とっても偉そうなお部屋の住人になっちゃったんですね」
「偉そうって言うなよ、お前な~。で、こちらは」
すると朱羽がすくりと立ち上がり、名刺を取り出して渡す。
「初めまして、私香月と言いまして……」
そしてちらりとあたしを見て、口元をつり上げた。
「陽菜さんの婚約者になります」
「なっ「今日は、どうしても連絡がとれない千紗さんのことをお伺いに参りました。なにかご存知ですか?」」
朱羽が切り出した。
「鹿沼、お前がわかってるだろ。婚約者……ええと香月くん、いいよ座って。ふたりでわざわざ俺に聞きに来なくても。普通それより、俺に報告だろ?」
にやにやしているが、それは無視だ。
だって嘘だもの。
「いや、それより千紗は……」
「ああ……お前、まだダメなのか」
「ダメ?」
「一時酷かったものなあ。学校辞めるほどだ。まあ単位とれていたから、表向き卒業扱いで大学の推薦はうまくいっただろうが」
「は?」
今なんて?
「なんだ、辞めたことも思い出してないのか」
「ちょっと待ってください。冗談キツいですって、サッ……き川教頭。あたしちゃんとここを卒業しましたって。そんな表向きじゃなくて……」
――お前はそこを卒業していない。

