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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

「なあ、香月くんも鹿沼の身内になる者として、どうしても聞きたいか? 知らなくてもいいこともある」

「私も聞きたいです。そのために、ふたりで来ました。ある程度は予測しています。ですが、なにが出てもすべて……俺が抱える覚悟です」

「くはっ。なんだそのイケメン、どこまでイケメンよ! お前よかったな、こんな奴と結婚できて。結婚式には呼べよ、いいな」

 あたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でて破顔して喜んでいる教頭だけれど、ごめん、それ全く嘘なの。付き合ってもいないの。好きだとも言ってないの。

 十年ぶりなのに、こんな大嘘ついてごめんね。

 悪いのは、このどこまでもイケメンよ。いつまでも、結婚式に呼ばれる夢を見て、元気でいてね。

 教頭は鼻歌を歌いながら偉そうなコの字型の黒いソファを立ち、横に壁のようにずらりと並んだ雑誌を見て、一冊を取り出して戻って来た。

「卒業アルバムだよ、お前の学年の」

「卒、アル……?」

「そうだ。3-B、見てみろ。お前いないだろ?」

 並んだ同級生だった男女の写真。

 思わず昔の口調に戻してしまった。

「ごめん、サッキー、あたし記憶がない。これらがあたしと同級生だったと言い切れない。違う学年のをもって来てない?」

「はあ。後ろ見ろ。いいか、お前の代全部の住所と誕生日。お前の生まれた年のものと同じだろう」

「本当だ……」

 どういうことだろう。

「この中に、あなたの彼氏は?」

 小声で朱羽が囁く。

 あたしの彼氏は顔を覚えている。

 それは――。

「あれ、いない。なんでだろ」

 あたしの彼氏がどこにもいない。

 確か隣のCに居たはずなのに。

「………。結城さんを見つけてみよう」

 また朱羽が小声で囁き、頁を捲る。

「結城……、ねぇ先生。結城睦月って、うちの代にいました?」

 朱羽はぺらぺらとアルバムを見ている。

「結城睦月はいないけど、熊谷睦月はいるが」

 くまがいむつき。

 くまがい……くま……。

 ちらちらと夢の顔が思い浮かぶ。

 結城の顔をした、あたしの苦手な――。


「熊谷睦月……居た」

 朱羽がアルバムのひとつを指さす。


「結城さんですね、この顔は」

 ……夢の通りに学ランを着て、若い顔ながらも昏い目をした結城がいる。

 
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