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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon

見守る中朱羽が戻ってくる。
「すみません。至急、東京に戻らないといけなくなりました」
「え? どうかしました?」
堅く、厳しい面持ちだった。
「……月代社長が重篤だそうです。いつ危篤になるかわからないと」
あたしは慌てて、自分のスマホを見た。
スマホの画面にある不在着信通知は、会社からの番号、結城の番号、衣里の番号、木島くんの番号。そして衣里と結城からLINEも入っている。
『社長が倒れた。早く帰ってこい!』
『陽菜、陽菜、どうしよう! 社長が倒れたの、元気だったのに!』
あたしは口を手で覆った。
あたしは自分のことばかり考えすぎていて、社長の容態が変化する可能性など考えてもいなかった。
ホテルで病的に朱羽を求めていたのは、もしかして社長の急変を予感していたのか。
ひとり幸せに酔うな、状況を見ろとの戒めの警告を、あたしは故意的に無視していたのかもしれない――。

