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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

 ***


 教頭がタクシーを呼んでくれて、大急ぎで駅に向かう。

 平日だったのが幸いして、12:32分発の新幹線がまだ指定席が取れるとのことで慌てて券を買い、10分前にふたりホームに走り停車している新幹線に飛び乗る。

 流れる景色の速さが、まるであたしの心の動きのようだ。

 昨日N県に来る新幹線の中では、帰りは朱羽と一緒に帰れないかもしれないと憂い、プレッシャーだった任務をなんとか果たすことが出来た夜、朱羽への恋心を自覚して自分から朱羽に甘えた。翌る日に待っていたのは、実家は既になく、両親と妹、彼氏まで死んでいるという事実。記憶の齟齬。

 そしてどうやらあたしの高校時代は、結城と社長が関係しているという不明瞭ながらの確信と、突然の社長の重篤。

 目まぐるしい現実に、なにからどう考えていいのかわからない。

「少し寝てるといい。大変だったし、これからはまた寝不足が続くかもしれないから。着いたら、起こしてあげる」

 朱羽があたしの身体にコートを被せ、腕を抱くようにして引き寄せ、あたしの頭を彼の肩に凭れさせた。

 朱羽の香りに包まれて幸せなのに、どこか苦しい。

 あたしは幸せになってはいけない……そんな思いが、心に湧くのだ。

 守と千紗が事故に遭ったことに、あたしは無関係と言い切れるか。

 少なくとも両親が自殺したのは、あたしのせいだ。

 そんな親不孝娘は昔の辛い記憶を捨て、東京で罪の意識さえ抱かす過ごした。さらには恋のために満月を克服できると思ったあたしは、家族の死と結びついたものを過去の出来事として、前を向けるのか。

 罪深いあたしに関わった者達が死んだ。

 だから社長もきっと、いずれ朱羽も――。


 離れなきゃ。

 一緒に居てはいけない。
 

 それに――。


 ひとのいい朱羽も、もういい加減うんざりしたはずだ。

 面倒臭い思い女だと。

 
 
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