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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 


 朱羽に触れた頭を持ち上げようとした時、肩にある朱羽の手があたしの頭にあがり、強引にまた彼の肩に戻し、その上に顎まで乗せられる。

「おかしなこと考えているだろう、今」

「……っ」

「悲劇のヒロインぶるな。あなたに関係ない偶然までも、自己嫌悪で罪として背負うんじゃない。そのうち世界のすべての悪が自分のせいだと思うぞ」

 強い語気なのに、朱羽があたしの頭に落とす唇は優しくて。

「……でも、あたしに関わると……」

「はは。今更じゃないか」

「え?」

「それに……、本当に辛いのはここからかもしれない。後はあのひとの良心を信じるしか……」

「ごめん、聞こえなかった」

 朱羽はあたしの額に唇を押しつけた。

「何度言えばわかるんだよ、俺は嘘をついて裏切る男じゃないんだって。……と、言ったの」

「そ、そう? もっと長かったように思ったけど」

「気のせいだ。まだ俺のこと、信じられない? だから離れようと?」

「そ、それは……」

「なに、俺あなたに遊ばれてるわけ? そうか、あなたを気持ちよくさせるためだけの道具か。それ以外には必要ないんだ」

「ち、違う!!」

「俺、なんのために我慢してたんだろう。あなたが元々ブルームーンを俺と過ごす気がなかったの知らずに、凄く我慢してたなんて。俺ひとりでブルームーンを一緒に過ごせると楽しみにしてたんだ」

「だから違うってば!! あたしは朱羽とブルームーンを過ごしたいから、過去と向き合おうとしたんじゃない。あたしだって楽しみにしてたわよ」

「へー」

「朱羽っ!! 勘違いしないでよっ!!」

 あたしは朱羽の顔を見上げた。

「勘違い? だったらあなたは俺に抱かれたいの? 嫌なんじゃないの、すっごく俺傷ついたんだけど。ああ、俺もうお払い箱なんだと思ったら」

「だから勘違いだってば!! あたしは朱羽に抱かれたいの!! ブルームーンを一緒に過ごしたい、お払い箱なんかじゃないの!!」

「ふーん。あなたは俺に抱かれたいんだ」

「そうよ、抱かれたいわ」

「ブルームーンだけ?」

「だけじゃない、その後も朱羽に抱かれたい……」

 そして気づく。

 周囲からのわざとらしい咳払い。

 にやにやしている朱羽。


 ……やられた。


 
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