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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 



「陽菜」

「………」

「こっち向いて、陽菜」

 絶対そっち向くものか。

「いじっぱりな、陽菜」

 あたしは窓に張り付いている。

「俺とブルームーン過ごしたいなら、こっち見て」

「………」

「取り消し?」

 あたしは渋々と反対を向いて、頬を膨らます。

 すると朱羽は、憎らしいくらいに綺麗に笑うと、顔を傾けて尖った唇にキスをしてきた。

 何度も何度も啄むように。

 ……大丈夫だよと安心させるように。

 そして、最初のようにあたしの肩を抱き、頭を彼の肩に凭れさせた。また抵抗したら、なにかされる。同じ事はしてはいけないと、朱羽に対する教訓と学習能力はついた。

「ブルームーンがもう来ていたらよかったな」

 朱羽が呟く。

「そうしたら俺は言葉であなたを縛れる。だけど……約束を破れない今は、俺を信じてと言うしか出来ない」

 朱羽が手を握ってきて、指を絡ませた。

「ごめんね、俺、不器用だし女慣れしていないから、どうすればあなたを安心させられるのかよくわからない。今さらだけど、あんなところを見られて、あんなことしておいてなんだけど、俺……、誰にでも年中発情してる男じゃないから」

 朱羽の顔が赤く染まり、あたしはぷっと吹き出した。

「……笑うなよ」

 むくれた顔が向けられる。

「ご、ごめ……ぷ、ぷぷっ!」

 駄目だ、笑いが止まらない。

「あ、あたし……、そんなこと思ったこと…、ない、ぷぷっ」

「……だったらいいけど……、いい加減笑いをとめろよ」

 うわ、なにこの可愛い生き物。

 外観は大人びた、頼れる上司なのに。
 
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