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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

 朱羽が核心を言わなかったことにどこかほっとしてしまったあたしは、なんとなくわかっている。

 朱羽が言いたがらないのは、それはあたしか結城か、或いは両方かにとって暴かれて貰いたくないことだろうということに。

 それを証拠に朱羽の横顔は厳しい。

 今も朱羽は思い至ったそれに、思いを馳せているのだろう。

 あたしはそっと目を閉じた。


 瞼の裏に映る映像が意味を持たなくなってしまった頃、あたしは夢の中に居た。

 乳白色の霧に包まれた中、足音がする。

 あたしの苦手な昔の結城が、崩した学ランを着て真向かいで足を止めた。

 凄みある顔で威嚇しているのに、瞳が澱んでいる。

 触ったら切られそうなほどに鋭利な空気を纏っているのに、同時に彼は、脆弱な悲壮感を漂わせていた。

 彼は口を動かした。


『うるせぇ。永遠なんてねぇんだよ』


 今の結城の声音で、あたりに反響する。


『壊してやる』


 憎しみが込められたような結城の声が、どこまでもどこまでも響き渡った。
 どこまでも……、あたしが封印していた、あたしの記憶の深層までも。
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