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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon

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うなされたらしく、朱羽に起こされてから、タブレットに連動したスマホにメールが入る。
木島くんが差出人だ。よく見れば何度も社長や会社の様子を伝えたメールをくれている。
結構彼、ガタイに似合わずマメ男なのかもしれない。マネージャーだったというのが、なんだかよくわかる。
今病室には、結城と衣里が必ずいるかと思いきや、結城は予定通り営業に回り、衣里の分を他の営業社員と手分けし、衣里が急病ということで都内を駆け回っているらしい。
今のうちの会社には、"また"という言葉がない。なにがなんでも仕事をとらないといけない戦場のまっただ中にいるのだ。
その戦場に、結城が自ら身を投じたことで、営業連中の志気が高まっている。そう、結城は仕事を投げ出して親の傍に居続けることは出来ないのだ。
結城――。
いつもの通りに、普通にしていないといけない。過去はどうであれ、今の結城への信頼を無くしたくない。あの笑顔は本当のものだと信じたいから。
……そう必死に思うのは、不安の裏返し。
社長の容態が落ち着いたら結城と話したいと思うけれど、出来るならば逃げていたいと思うのも本音。
いい過去が出てくる気がしないから。
嫌な過去に、結城が居て欲しくないの――。
"壊してやる"
ねぇ、それはあたしの家族が死んだことに繋がっているの? それとも別のこと? ……あたしになにかをしたの?
夢の中の結城の言葉が、あたしの遠い記憶にもあった。
同時にぽろぽろとこぼれ落ちた記憶の断片。
最初の夢にもそれは関わってきて、それが本当かどうか、結城に確認するのが無性に怖いの――。

