この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon

社長の手を握り、片手では衣里の頭を撫でながら、小さく声をかける。
「社長。あたしは色々……お礼を言いたいんです。あたしをムーンに入れてくれたのは、偶然じゃなかったんですね……と、衣里!?」
衣里があたしの手にのしかかるようにして、気を失った。
人間、意識がなくなった途端に凄まじい重さになる。両手を使ってもよろけるあたしを救ってくれたのは、背広姿の結城だった。
「あ、ありがとう」
あたしが難儀した衣里をすっと両手で抱いて、客間に運ぶ。
「なあ、鹿沼」
背中を向けたまま、結城が尋ねた。
「……俺の顔見ないのはどうして?」
「べ、別に……。衣里で手一杯で……」
「親父に、お前が会社に入ったのは偶然じゃなかったって、なに」
「そ、それは……」
小さく言ったつもりだったのに。
結城はあたしの変化に気づいている。
「N県で、なにか……、思い出したのか?」
……そう、そんなこともわかるくらい、あたしと結城は近くに居た。

