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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

「……っ」

 違うと言えなかったことを、是と受け取ったのだろう。

「鹿沼、後でちょっと話そうか」

 抑揚ないその声はどこまでも固く。

「俺これから、仕事二件入ってるんだわ。七時には帰れるとは思うけど。お前今日はどうする?」

「ここに泊まる」

「……だったら、夜でいい? お前、色々俺に言いたいことがあると思うけど。それまで待って貰えるか?」

 ねぇ、なんで。

 なんでそんなに冷ややかな声を出すの。

 あたし、結城の敵側に居る人間なのかな。

 やっぱりあたしは憎まれているのかな。

 今まであんなに仲良くやって来たじゃない。

 結城は、それをナシにしようとしてる?

 だから弁解もしないで、そんな声を出すの?


 ……確かに、このままじゃいけないね。


「わかった」

 
 逃げてはいられない。



「香月、ちょっと手伝ってくれるか。それと仕事の話もしたい」 

「……わかりました」


 ねぇ、朱羽。

 結城はどんな顔をしているの?


 困った顔? 怒った顔? 悔やんでいる顔?


 いつものように気軽に声をかけられないあたしは、それでも普通でいたつもりだったあたしは、どうしていいのかわからず、唇を噛みしめた。


――壊してやる。


 ナイフより鋭い……あの頃の結城の目が、あまりにも痛すぎて。

 
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