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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 


 可愛い可愛い陽菜。

 最初から雅さんにとって特別だった。

 私は"カワウソ"とか愛称も、下ネタでさえ構って貰えなかった。

 ずっと、ただの"真下"のまま――。

 
 せめて酒に溺れたら、このやるせない想いが軽くなるのか。

 そう思っても、酒は私を満たさない。

 飲ませて飲ませて、雅さんを飲ませて。ようやくして貰えたキスが、涙が出るほど嬉しかったのに、彼は翌朝言った。

――酒の力だ。忘れてくれ。


 遊びでもいいよ。一度だけでいいよ。

 だから私を女に扱って。私を愛して。

 雅さん……。


「――は、お前も……知っているのか」

「いいえ、予想だけです」


 ああうるさい。

 誰の声?


「どんな」

「……彼女の妹と、倉橋くんが事故に遭ったあの日。既に家の中にふたりは居た」

「………」

「事故に遭ったのは、ふたりが帰ってきた時ではない。ふたりが家から飛び出した時だ。ふたりを追いかけて、鹿沼さんもあなたも仲間も家から出てきた。つまり家でなにかがあった。あなたや倉橋くんと仲間と、鹿沼姉妹との間で。そのショックが彼女の満月の発作になっている」

「……満月を聞いたのか、お前」

「はい」

「受け入れた、のか」

「はい」

「……はぁ。頭がいいイケメンって嫌いだ。お前があいつだったら、とうのとっくにばれて、俺の傍にはいねぇよ……」

「……結城さん」

「ん?」

「あなたが、彼女の友達で甘んじたのはなぜですか?」


 うるさい、うるさい、うるさい。

 雅さんの夢を見せて――。


 
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