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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

 ……少し前、山瀬さんから電話があった。

 それは教頭の言葉を裏付けることであり、そしてあたしの夢の意味を補足するものであった。

――千紗ちゃんと男の子は家から出てきたの。丁度私とぶつかったけれど、いつも優しい千紗ちゃんが私を突き飛ばしたまま、怖い顔で走っていた。それをあなたが、陽菜ちゃんが追いかけていた。その後を男の子が大勢。

――あなたの家は少し変わっていたわよね。千紗ちゃんばかり可愛いお洋服を着せて、ご両親可愛がっていたでしょう。そのせいか千紗ちゃんは本当にワガママで、だけどあなたは本当にいい子だったわよね。あなたを心配して声をかけた私に、あなたは家族がいるのは幸せだってそう笑ったのよ。

 ちりちりと頭が痛み、満月がちらちらと瞼の裏に点滅する。

 あたしは、なにか都合が悪いことばかりを忘れて、残ったもので都合がいいようにつなぎ合わせているような気がする。

 あたしはN県から帰って、家族に対しての記憶もないことに、今さらながら気づいた。家族が居るのはわかっているのに、家族に対する思い出がなかった。先に朱羽に疑問に思われていた通り。

 それなら、ムーンに入社して六年の付き合いになる社長の方が、実の父親以上の思い出を持つ、身近な存在だったと強く思う。

 実の父親はあたしのために死なせてしまったのだから、社長には長生きをして貰いたい。

 たとえ余命宣告を受けていても、こんなに早い時期に逝かせたくない。

 ひとが死ぬのはもう嫌だ――。



 時刻は五時をちょっと過ぎた。

 結城が帰るまであと二時間――。

 
 あの後結城は、朱羽と衣里を運んだ客室に籠もっていた。

 仕事があるから今は話せないといいながら、朱羽とは喋ってられるんじゃんと思っていた中、結城が慌てて部屋から飛び出してきた。

 単純に時間を忘れてしまったらしい。

 やべぇ間に合うかと騒ぎながらドアを開けたが、ふと足を止めて後ろを向いたまま言った。

「社長をよろしく」

 誰に言ったのかわからない。それでもあたしは、あたしに声をかけたということがわかった。結城はあたしの気配を感じていると。

 ……お互い、それがわかるくらいの付き合いだ。

「こっちは大丈夫。だから安心してお仕事頑張れ!」

 そう言うと、結城はあたしに背を向けたまま、片手を上げて出ていった。
 
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