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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

 ***


 午後六時四十分――。

 社長の前でついうとうとしてしまったあたしは、ピーピーという音に目が覚めた。

 機械の赤いランプが点滅している。

 血圧が40くらいにまで下がっていた。


「社長、社長!!」


 警鐘のような音とあたしの叫び声に、朱羽と衣里、木島くんが駆けつけてきて顔色を変える。

 衣里が悲鳴をあげた時、白衣を翻した医者と看護師が数人物々しい様子でやってきた。

 医者は社長に呼びかけながら、目を開いて瞳孔をペンライトで確認したりする間、また違う機械からピーと長い機械音が鳴り、0となった数値を見て、厳しい声で言った。


「……心肺停止。電気ショックを行う。準備!」

「はいっ」

 ふたりの看護師が慌てたようにして準備する。


 心肺停止!?

 あたしは震える衣里を抱きしめ、衣里の肩に顔を埋めるようにしながら、ドラマや漫画でお馴染みの単語が物語る、その光景を見れなかった。

 音が聞こえて、飛び上がる。


「反応なし。もう一回!」


 医者の声に、焦慮を感じる。


「雅さん……っ」


 衣里が耐えきれずに名前を呼んだ時、結城が戻って来た。

 かつかつと靴音をたててやってくると、あたし達の様に目を瞠った。


「親父は!?」


 結城の問いに、朱羽が答えた。


「心肺停止したので、今電気ショックを」

「はああ!? なんだそれ!?」


 結城はコートを翻して、社長の足元に立つ。


「なにやってんだよ、社長!! 目覚めろよっ!!」


 悲痛な声が響き渡る。
 
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