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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 


「下がっていて下さい。もう一回いきます」

「親父……っ」



「変化がない。もうい「親父――っ!!」」



 息子としての結城の声が響いた、その時。

 波形も下線になって数字も0だったものが、少しだが……上昇し始めた。


「親父、戻ってこいっ!! なにやってんだよ、早く戻れ――っ」


 衣里があたしを突き飛ばすようにして一緒に叫ぶ。


「雅さん、戻ってきて!! 戻ってぇぇぇ!!」


 数字が上がっていく。

 社長が応えている――。


「社長、鹿沼です!! 聞こえてますよね、社長!! 戻ってくれないと、あたし……約束実行しません。それでもいいんですか!?」


 呼びかけると、どの数値も上がっていく。

 生きたいという社長の意志が、機械を通じて顕現されている。


「朱羽、木島くんも呼びかけて! もっともっと皆で呼びかけよう!! 社長がこっちに来てる。だからもっと引っ張って。社長を離さないで!!」


 あたしの声に木島くんも朱羽も声を上げる。

 ばらばらだった皆の声がひとつになった。



「「「「「社長!!」」」」」」




 そして。




「……不思議と、すべての数値が安定しています。この分なら、もう人工呼吸器は取り外せます。ひとまず危機は脱しました」



 夜十時――。

 ……社長は酸素呼吸器をつけて、少し顔色を取り戻した。

 
 
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