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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon

「しかし、落ち着いてよかったすね~」
「木島くん、帰っていいよ。ここは人数いるから」
「駄目っす! 俺も秘密共有者なんっす! ここに居ます! お茶くみ洗濯マッサージ、得意っす!!」
「お~、じゃあマッサージしてくれ」
「了解っす!」
結城と木島くんが仲良くじゃれ合っている間、あたしは衣里に声をかけた。
「社長は大丈夫だよ、だから衣里もしっかり」
「……うん」
「信じるんだよ、あたしも信じてるから。社長は逝かないって。あたし達の社長は無敵なんだから!」
「はは……、そうだね。無敵だ……」
「でしょ!? ……木島くん、しゅうしゅううるさいよ、なに結城に発情しているの!」
大丈夫。
「発情!? お前……」
「違うっす! 主任が変なことを……結城さん、揉ませて下さいよ」
「うわっ、キモッ! どこ揉む気だよ、お前」
「肩に決まってるじゃないっすか! 逃げないで下さいよ、結城さん!」
直接ではなく人を介せば、いつものように結城と接することが出来る。
……笑っていられる。
大丈夫。
そう思ってたのに。
「鹿沼、ちょっと話そう」
タイミングを推し量っていたのだろうか。
唐突に結城は、ふたりきりになろうと客間を指さす。
身構えていなかったあたしの唇が震える。
結城とふたりきり……。
いつも簡単に出来ていたのに、セックスまでしたのに、椅子から立ち上がれない。
「頼むから」
弱々しい声が聞こえる。
泣き出しそうな表情で、結城があたしを見ていた。
唇が震えているのは……あたしと一緒だ。
「……鹿沼さん、行きましょう」
朱羽の手があたしの腰にかかる。
その手の温かさと朱羽の匂いに、弱いあたしは、このまま朱羽の腕の中に飛び込みたいと思った。
朱羽があたしの耳に囁いた。
「結城さんが大切なんでしょう? 結城さんに長く傍にいて貰いたいなら、これを乗り越えないと駄目だ。あなたも結城さんも」
「………」
「今の結城さんを信じて」
「……。わかった。朱羽……、あたしひとりで行けるから」
心配そうな衣里と木島くんの視線を感じながら、あたしは結城の後ろについて、客間に行った。

