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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon

***
結城に促され、ふたつのベッドに向かい合わせに座る。
距離にして1mくらいだというのに、至近距離すぎるように思い、もっと遠くに座りたい心地がする。
「……そんなに、緊張して強張らないでくれ。なにもいえなくなる」
俯いて太股に置いた握り拳に力を入れていたあたしに、切なそうな声が降ってくる。
駄目だ。
戦うって決めたでしょ!
結城とこのままフェードアウトで終わりたくない。
意を決して顔を上げると、頼りなげな結城の顔が向けられていた。
……いつでもあたしを理解してくれて味方でいてくれた結城。
満月で悩むあたしの腕を引っ張り上げてくれた結城。
この対峙は、あたし達の8年間を無に還す恐れもあるものでもある。
「………」
「………」
しばしの無言を経て、結城が言葉を噛みしめるようにゆっくりと言う。
「全部、思い出したのか?」
あたしは緩やかに首を横に振った。
「……思い出しかけている、だけ。だから詳細を知りたい」
「そう、か……」
「"壊してやる"ってなに? "ゲーム"ってなに?」
あたしの中から、夢で結城が口にした言葉が離れない。
たかが夢、されど夢。
あたしはそれがあたしが作り出した架空の言葉ではないと、既に確信していた。
それが現実だったという証拠に、結城の瞳が苦しげに揺れている。
「あたし、N県で実家にも行って、高校の……サッキーのところにも行ってみたの。あたしの両親と千紗、そして守が死んでいるって。しかもあたしは、結城と社長に連れられて、御堂先生のところに通っていた。……あたしの記憶と違うのはなに? あの日、なにがあったの?」
結城はため息をついてから、力ない目を向けてきた。
それは昔の結城とは別人のように違う。
「俺はあの頃――」
結城は一度項垂れた頭をぼりぼりと掻いてから、顔を上げてあたしを見つめて言った。

