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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
「私は十五歳で――」
やばい、やばいよこれ、あたしの死亡フラグが立っちゃったよ!!
どこで間違えた!?
これは、先手必勝でダメージを最小限で抑えるべし!!
「あのですね!! 九年前のことは……」
思わず立ち上がって弁解を始めたあたしの前で、座ったままの彼の綺麗な人差し指が動く。
それは――。
「はい? 九年前がなにか?」
今開かれているT組合のファイル資料、T組合の創立年月日だ。
それは九年前の日付だった。
「なんでもありません!!」
あたしは怒りと羞恥に赤くなって座った。
くすくす笑う課長の顔なんて見られない。絶対わかっていてあたしをからかったんだ。
言わない。
絶対あたしは九年前のこと、言わないし謝らないから!
「鹿沼主任は、素直なのか意地っ張りなのかわかりませんね」
意外なほど穏やかな声が聞こえて、思わず眉間に皺を寄せたまま隣を見た。
「凄い顔。可愛い顔が台無しです」
「……お口がお上手ですこと!」
ふん、と横を向いた。
このひと、冷たい外見でも軟派男なのか。
「ああ、眠いからおかしいこと口走っているかもしれませんね」
「はい!?」
思わずいきりたって課長の方を見る前に、右肩にずっしりと重いものがきた。
「課長?」
香月課長の頭が、あたしの肩にある。
彼の呼吸を感じた肩が熱い。
なんで残業で、こんなシチュエーション!?
「課長、ちょっとどうしちゃったんですか?」
肩をゆさゆさ揺らしてみると、目だけが開いた。
長いまつげに縁取られた、奥二重の切れ長の目――。
「どうしました? 具合でも悪いんですか?」
琥珀色になりきらない……透き通るような茶色い瞳がじっとこちらを見ている。