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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
彼の黒髪が揺れて、あたしの首筋を擽る。
あんなに鉄面皮なのに、髪は柔らかい。
九年前と同じように。
フラッシュバックのように、九年前の満月、快楽に喘ぎながらこの髪を抱きしめるようにしてまさぐっていたことを思い出し、無意識に手を動かしていたあたしは焦った。
身体は、彼を思い出している――。
「あの、眠いなら今日は終わりに……」
「……ひとが、信じられなくなりました」
「え?」
寝ぼけているのだろうか。
だけどその視線は痛いくらいに強いもので。
……見ているこちらが切なくなるほど、悲しいもので。
「あなたにとって、俺は過ち?」
きっと九年前のことを言っている――。
一人称を変えて絞り出された彼の言葉は、切実な響きがあった。
どくりと、心臓が脈打つ。
「俺は――」
彼が辛そうに目を細めて口を開いた時、衣里の声がした。