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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
「あの頃の俺は、ひとを傷つけてもなにも感じない……そんな奴で。すぐキレていた。そんな俺に近づいて来れたのは、親父と倉橋だけで、倉橋は中学時代からの俺のダチだった。あいつも片親だったからなのか、世間の愛情溢れている家族を見ると、反吐が出る……そんなふたりだった」
あたしの頭に、反響するのは……守の声。
――ヒナ、こいつは俺の親友の熊谷。
「……前にお前、俺に聞いたろう? 男友達はいるかって。俺にとって倉橋だけだ。他にはつるんでいたのはいたけれど、友達とは思ってなかった。倉橋が死んじまったから俺も男友達は作っていない。……あいつが死んだ時のこと、思い出すから」
そして……、守は千紗の前でこう言った。
――熊谷は、お前の妹と付き合ってる。
――お姉ちゃん、実はそうなの。
「千紗の……彼氏?」
結城は、困ったように瞳を揺らす。
「まあな」
「えええ!? いつ、千紗と接点が……」
「俺はさあ、あの頃お前が嫌いだったんだよ」
「……っ」
結城の言葉にびくつくと、結城は苦笑した。
「あの頃限定で考えてくんね? 今は違うから」
「……本当?」
「ああ。俺、嫌いな奴と8年も付き合わねぇから。そこまでの暇も気力もねぇわ」
「……ん」
少しほっとした。
「あの頃俺、すべてに対して懐疑的で刹那的で。ましてや男女の情なんて一過性で終わるものだと思ってた。親がそうだろ、ふたり揃ってねぇってことは子供が居ても居なくても関係ねぇ、やることやったら必ず終わるものだと。だから俺も、近寄ってくる女を適当に食って、それで終わり。そんな奴だった」
結城は自嘲気に笑った。
「適当に女とやってた時、何度かお前に目撃されてさ。丁度倉橋とつきあい始めた時だから、余計俺を目にしたんだろうな。それまでそんなことは一切なかったから。お前は……震えながらも俺にこう言った」
――ねぇ、永遠の相手を見つけてみたら?
まるで記憶がない。
だけど結城が苦手だった意識はまだ残っているから、見兼ねてのことだったんだろう。