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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

 家族……。

 千紗……。

 目の前がちかちかと白い閃光が走る。

「おい、鹿沼大丈夫か? ゆっくり息をしろ、深呼吸」


 笑い声。

 泣き声。

 怒鳴り声。


「そうだ、それでいい。落ち着いて……」


 頭の中で声が揺れる。

――これからお前の妹になるんだ。仲良くしろよ。

 ……嬉しそうな父の声に、揺れる記憶が定まった。


 そうだ……。

 千紗があたしの妹になったのは小学5年生の時。親戚の子で、両親が事故で亡くなったから引き取ったと、父親が連れて来た。

 厳密に言えば、血が全く繋がっていないわけではない。ただ遠いだけで。

 いつも喧嘩ばかりしていた両親は、千紗が来てくれてから仲良くなった。気むずかしくてうるさかった父が、優しくなったのだ。

 あたしも笑顔になった。あたしも両親も千紗を可愛がった。甘やかした。それが当然という空気が確立されていた。

「あたしは、幸せな家族だと思っていた。血は繋がらないけど、可愛い妹で……、あたしが守ってあげないとと……」

 結城があたしを見ている。


「だからあの時も……」


――千紗!?



「思い出したんだな?」

「うん」


 あの時――。


 あたしは、結城らと家に行った時、バイトでいないはずの千紗の部屋から、艶めかしい喘ぎ声を聞いたんだ。


――駄目、イッちゃう! それ駄目、駄目ぇぇぇっ!


――はっ、はっ、千紗、可愛い……。


 同時に重なるのは、あたしの彼氏である守と、


――千紗。手と口をちゃんと動かして。教えただろう?


 どくっ。

 心臓が口から飛び出してきそうな衝動。


 公務員をしていたはずの父の声も聞こえて来たのだから。
 
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