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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
「苦しかったね、言えないで」
「……っ」
「あたし、結城を全然理解しようとしてなかった。助けられることに慣れすぎていた」
声が震える。
「嫌いになれないよ、結城のこと。昔は苦手で怖かったけど」
おずおずと結城の手もあたしの背中に回してくる。
「結城のせいで苦しんだのかもしれないけど、結城のおかげで助けられて今のあたしがいるんだよ。お父さんが千紗やあたしにしでかしていたことに気づくことなく、千紗の悲しみに守の本心を知らずにいることの方が、あたしは滑稽で嫌だったから。知っちゃいけない真実はあるとは思うけど、知らなきゃならない真実もあると、あたしは思うんだ」
「……っ」
「昔は最悪だったけれど、だけど結城が警察に言ってくれたのもわかってる。色々尽力してくれたのも、あたしの生きれる環境を作ってくれたのも。やっぱりなにを聞いても変わらないや。結城はあたしの大切な友達だよ」
背中の手がびくりと震えた。
「……友達か」
「うん」
「即答すんなよ。だけど……なんかわかってたわ」
「え?」
結城とあたしを離して、笑いかける。
「俺はお前に対して……満月に一緒に逃げることしか出来なかったけれど、あいつは違うんだろう? 過去と……満月と、立ち向かおうとしたのはあいつのおかげなんだろ?」
「うん。朱羽のおかげ」
「俺にも名前で呼ばないのに、あいつは名前呼びかよ、こいつ」
結城がいつものように笑った、あたしにデコピンした。
「陽菜、香月が好きか?」
「……うん」
結城の想いを知っているだけに、答えることは辛いけれど、だけどこれが今のあたしの素直な気持ちだから。