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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
「逃げてやることしかできなかった俺では、お前の相手では駄目なことは俺でもわかってる。お前を導ける相手じゃないと」
結城は真剣な顔であたしを見た。
「すべてをわかっていながら、黙ろうとしてくれてるあいつなら」
「結城……?」
なにかひっかかって訊いたけれど、答えはなく。
「あいつなら、俺は……お前に、永遠を友達に求められる」
ほろりと、結城の片目から涙が頬に伝い落ちた。
「結城……」
「あいつなら、俺……我慢してやる。……少しの間」
「少しの間?」
「そう。お前があいつに飽きた時を待ってる」
「は? ないよ、そんなの」
「わかんねぇだろ。俺、お前の隅々まで知ってるし。片思い歴長いし、待つことに慣れてんだわ」
「いや、それでもあたし両天秤とか嫌だし」
「深く考えんなよ」
結城はあたしをぎゅっと抱きしめた。
「俺が勝手にすることだから。お前の傍で友達していながら、お前と永遠作って待っててやる。お前が教えてくれたことは、無駄にしねぇから」
「……わかった。友達ね」
「わかってねぇよ、お前!」
「きゃあ、鼻摘ままないでよ、痛い痛い!」
ゴホン!
ゴホゴホン!
なにやら咳払いが聞こえ、慌てて結城ともみ合うようにしながら見上げた先は、腕組をして立っていた朱羽だった。
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「はは……。全部ばれた。だけど……すっきりした」
あたしは知らない。
「香月、黙っていてくれよ。お前ならきっと気づいているんだろう。本当に倉橋と千紗が事故だったのか。あいつらが精神病院行きになって証言できなくなったのはなぜか。……これが、あの時の俺がお前に出来た贖罪だった。
はっ……。そうだよな、俺が選ばれるわけはない。だけど……、答えを出されるのは辛いな。――……くそっ」
ひとり残った結城がひとしきり泣いていたことに。