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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 


 幸か不幸か、そこから先はすべてを思い出したわけではない。

 ただ痛かったことだけは記憶しているから、父はあたしの濡れてもいない膣に猛ったものをねじ込ませたのだろうと思う。

 その想像がおぞましくてたまらない。 


 千紗は、いつもあんなことをされていたのだろうか。

 あんな気持ち悪いことを、あんな汚らわしいことを。

 親子でありながら――。


「うう……どうしよう、どうしよう……」


 綺麗な身体ではなかった。

 あたしは禁忌の関係を持ったのだ。

 その身体を結城に拓き、朱羽にも……。

 恥ずかしい。

 朱羽に触れられたいと思っていた身体が、禁忌に穢れていることが。


 ブルームーンに抱かれたいと思った。

 だけど、こんな女……朱羽は抱きたいとも思わないはずだ。

 どうしてあたしは、次から次へと重いことばかりで。

 どうして朱羽に近づくことが出来ずに、遠ざかってしまうの。


 あたしはきっと、朱羽と抱き合うことがない。

 朱羽はこんなあたしを、嫌いになる――。
 

 その時、ガコンとなにかの音がして驚いて顔を上げる。

 後ろの自販機から、温かいミルクティーの缶を取り出していたのは……。


「はい、これを飲んで。口が渇いているだろう」


 朱羽だった。

 朱羽があたしに近づいてきたから、あたしは反射的に逃げようとした。

 朱羽を背に椅子の反対側へと。


「陽菜!」

 
 闇夜に響く朱羽の怒声にあたしはびっくりしすぎて、びくんと震え上がった瞬間、下腕を捕まれる。


「き、聞いてたんでしょう!? あたし……もうシャレにならないくらい、あたし……」


 腕を放して逃げようとしたあたしは、朱羽に抱きしめられた。

 すっぽりとその胸の中に包まれる。

 その匂いが、今のあたしには辛すぎて。

 
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