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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 


「喧嘩ばかりしていた夫婦仲。千紗ちゃんの登場でお父さんは和んだ。あなたのお父さんは昔から幼女趣味があったんだろう。そうなれば老いるだけの妻は蔑視の対象になる。

あなたにそれまで手を出さなかったのは、そこにお父さんなりの理性があったんだろうが、鬱屈したものはたまっていたはず。だから貰い子の千紗ちゃんは、お父さんのストレスの捌け口になってしまったんだろう」

「まったく、あたしも気づかなかったの……」

 千紗はあたしに助けを求めていたのかもしれない。

「結城が知る裏の顔を持っていたことも。あたし……お姉ちゃんだったのに」

 泣きじゃくるあたしの背中を朱羽は優しく撫でた。

「優しいお姉ちゃんだから助けて欲しい。だけどお姉さんの親が相手なんだから知らないで欲しい。彼女はきっと煩悶の中、お父さんに壊されて行ったんだろうね。彼女は……被害者だ。子供だから貰い子だから、だから彼女はSOSを出せなかった」

「あたし……、恨まれてたの。それを知らないで……」

「だけどこうも考えられる。千紗ちゃんは、お父さんがあなたに向かうはずの性欲を、その身体で千紗ちゃんだけにとどめていてくれたと。あなたを守っていたんじゃないかな。あなたが父親との関係を気づいてしまったら、あなたはお父さんを詰るだろう。そうなったら逆上して、あなたにも魔の手が伸びるかもしれない。そしてあなたが愛する家族が壊れる」

 あたしを罵倒した千紗が?

 あたしは、車に撥ねられる瞬間の慈愛深いような微笑みが忘れられない。千紗なりに……家族を、あたしを愛してくれていたのだろうか。

「あなたの彼氏の倉橋くんだけれど、彼も悪かった。もしもふたりの情事を覗いていた彼が欲に負けず、千紗ちゃんをお父さんから連れ出してくれたのなら、また話は変わっていただろう」

「あたし……多分彼に愛情なかった」

「だろうね。そんなのはあなたの恋人にはふさわしくない。その場に俺がいたら、二番目に殴り飛ばしてやりたい」

「ふふ、一番目は?」

「あなたのお父さん。そして三番目は結城さんだ。彼が詰ったあなたの永遠の話、彼は境遇になぞらえていたけれど、それは単純に彼の僻みだ。言ってただろう彼も。永遠がないと自分が信じていただけだと」

「うん」

「俺はね、彼の気持ちがよくわかるんだ。俺も似た境遇に居たからね」

「え?」

 
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