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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
「だからなにかにあたりたい気持ちはよくわかる。それが痛いところを突いたあなただった。はっきり言えば八つ当たりだ。でも必ず救いはある。結城さんを救ったのは、俺にとっての渉さんの立ち位置である社長だ。そしてあなたを救っていたのは、結城さんだろう? ああ、社長もきっと土地の売買からなにから後処理をやってくれていただろうね。御堂医師の手配も」
「………」
「結城さんは結城さんなりに後悔して、あなたのためにと全力を注いで守ってくれたと思う。そりゃあ昔のことは消えないけれど、それでも……千紗ちゃんを守ろうとするあなたの姿が、結城さんの暗澹だった心を引き上げたんだ。無関係な人間同士でも、意味があって繋がって今がある。そう思わない?」
「朱羽……」
「だったら俺の意味は、結城さんに傷つけられた過去を知った現実から逃げだそうとする陽菜を引き上げること。それは結城さんじゃできない。俺の役目だって、俺はそう思っているけど?」
「………」
「お父さんとのことは完全に思い出してるの?」
「完全ではない、けど……」
「だったら御堂医師の力がまだ効いているのかもね。だったらね、陽菜。ブルームーンでその嫌な記憶を上書きしよう?」
「ブルームーン、あるの?」
あたしの目から涙が零れた。
「なしにするつもりだったのか!?」
逆に怒られてしまう。
「いや、もう駄目だなと……」
「あなたが穢れているというのなら、全部愛して上げる」
朱羽があたしを抱きしめて、耳に囁く。
「過去があって今のあなたがいる。恥ないでいい。嫌悪しないでいい。胸を張って今までのように行こう。あなたが過去を思い出して泣きたくなる夜は、俺を隣に置いて。あなたが泣き止むまで、ずっと抱きしめててあげるから」
「朱羽、朱羽――っ!!」