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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

「はは……。じゃああたしが疲れない限り、ずっと友達だね」

 そうやって茶化すことしか出来ないあたしを許して。

「お前なあ!」

 ……結城に恋愛感情がもてればよかったのに、あたしの心は結城が絡んだ過去があってもなくても、どうしても朱羽に向くんだ。

 あのひとなら、永遠に恋愛したいと思うから。

「結城に気になる女の子が出来たら、あたし全力で応援するから。ちゃんと言ってね」

「うわ、お前それキツいって。だけど……気になる奴ができない限り、お前を好きでいていいとお許しが出たわけだ?」

「はあ!?」

「困難な案件をものにしてきたこの営業課長、簡単には引き下がらんぞ? ん?」

 結城はあたしの頬をモチのように伸ばした。

「イタタタ。ちょ、なに、イタタタタ」

「先に行ってるわ」

 あたしの髪をぐしゃぐしゃにして、笑って結城は先に出ていった。


 結城が使っていた枕が濡れている。

 ……涎ではないだろうな、うん。


 あたしは友達として、結城の手をとりたい。

 これが今のあたしの選んだ道――。



「「「ぶはははははは!」」」


「鹿沼、お前――っ!!!」


 大勢の笑い声に、結城の怒声が重なる。


 あたしの手には黒と赤のマッキー。

 今頃結城の端正な顔に、黒いお鼻の両側に長いおひげが生えて、真っ赤なほっぺになっているのを、皆に見られているだろう。

 油性マジックはクレンジングで落ちるのかよくわからないから、しばらくその顔かしら。あらやだ、明日の営業大丈夫?


「ぷぷぷ……」


 ……ささやかながらのあたしの復讐と、切れない縁を願って。
 
 



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