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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
***
午前一時――。
真夜中の宴は、大笑いの内に幕を閉じた。
この騒ぎの中に社長がいなかったのが寂しいけれど、だけどきっと日を違えた今日こそ、目覚めてくれると信じたい。
後始末は、自発的に手をあげた木島くんと、朱羽に任せた。
月とすっぽんと言っていいのか、凸と凹と言っていいのかよくわからない奇妙なコンビは、雑談をしながらリビング室で広がっている残骸を片付けていく。
一体なにを話しているのかわからないが、木島くんが懐いていることに対して、朱羽は嫌がっていないようだ。
酒の力を借りずに結城と朱羽の横に座り、またいつものように笑えたあたしは、日常はそう簡単に終わらないことを知った。
朱羽と結城、このふたりが傍に居てくれたら、あたしは過去を乗り切れる。無敵になれる気がする。
そこに衣里が加われば、あたしはなんていい人生を過ごしているのだろうと思わずにいられなかった。そうも思えるようになったのは、やはりあたしが大好きな人達が、本当に優しくていい奴だからだ。
倒れたら手を引き、檄を飛ばし、或いは見守ってくれて、あたしはなんとか進んでいける。
血の繋がった家族はいないけれど、血の繋がらない身内より近しい他人がいる。愛すべき人達がいる。
あたしは、ひとりじゃない――。
それが今のあたしの強さになっている。
結城と衣里は社長のところで、声をかけているようだ。
沙紀さんが朱羽と話して、ゴミ袋を取り上げているのを見た。朱羽は沙紀さんが膨らませたゴミ袋をひったくるようにして奪い取り、木島くんと室外のゴミ捨て場に捨てにいった。
洗い物をしようとしていたあたしから、手持ちぶさたになったらしい沙紀さんが茶碗をひったくり、洗い始めてしまった。
さてあたしはどうしようとため息をつくと、綺麗になったリビング室の机に肩肘をついてなにやら思案顔の専務と目が合った。
ちょいちょいと指を振られて傍に寄ると、隣に座れと椅子を指さされてあたしはおとなしく座った。
「朱羽にも話したけど、お前にも話しておくわ。今日の会議」
急に緊張が走った。