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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
「衣里、ありがとう!!」
一番衣里が反対すると思っていた。
だけど衣里もちゃんと結城のことを見ていてくれたんだ。
「お礼言われることはしてないよ、ただ真実を言っているだけだもの。そりゃあ人間的にはまだまだで、私もこの単細胞にいらいらするけどさ」
結城を沈めることも忘れない。
「だけどそうした欠陥は、私達で補えれると思うし。結城は度胸もあるしはったりも得意だし。それがなきゃ課長になれないでしょ、あはははは」
「……おい、真下」
「私は賛成です。うちの重役は逃げてまるで役立たずだし、うちら社員の承認でいいでしょう。木島くんの言うとおり、月代社長を会長にするの大賛成。残りは……専務はどうですか? 結城なら頼りなさそう?」
専務はじっと結城を見て言った。
「営業成績や人柄がどうのというより、月代さんがそう思っていたのなら俺は月代さんの意向を尊重したい。だけど問題は……」
鋭い目を向けられて、結城は僅かに怯んだ。
「結城。お前の意志だ」
「……意志?」
「そうだ。社長就任は出世とか気楽に考えて貰いたくない。今なら特に、はっきり言えば針の筵(むしろ)の絨毯を歩くことになる。今の方が楽だと思う。営業で仕事をひとつでも多くとらないといけない、必死に駆け回らないといけない今の方が。だからお前にやる気がない限り、たとえ社長になったとしてもお前ごと会社は潰れるだろう」
正論だ。
あたしは、とんでもないことを結城に押しつけたのだ。
だけどそれは――。
「あたしは結城なら出来ると思っている。どんな困難でも挫けない結城という男と、そしてあたし達がいるから」
あたしを守り続けてくれた結城なら。
あたしは結城が、信用に足る男だと思っているから。
「鹿沼……」
それが過去と決別しようとしているあたしの、結城の見方。
結城なら、それ……感じ取ってるよね?
皆が結城を見た。
その目は、結城が出来ると信じてやまない強いものだ。