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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
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その夜は、結城と衣里と朱羽、木島くんでムーン時代からの話をしながら、社長の傍に椅子を置いて座っていた。
朱羽と木島くんはムーン時代のことを知らないけれど、こうやって思い返せばいかに会社に愛着があるかを改めて知る。
あたしから奪い取った残り少ないクレンジングをほぼ使って、意地なのか……大体落としてきて、ちょっとひりついているらしい赤ら顔の結城は、黙り込んであたしと衣里が語る昔話を聞きながら、社長を見ている。
「あのさ、俺ひとりにさせて貰える? 親父と話したいんだ」
あたし達は頷いて、席を外した。
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リビング室で雑談していたが、眠りに落ちてしまったらしい。
ふわふわとした浅い意識の中で声が聞こえる。
「……木島、ちょっと親父のところ見ていてくれ。女ふたりを、ベッドで寝かしてくるから」
「了解っす! 結城社長!」
「おいこら、それはやめろって……。香月、鹿沼頼むわ」
「はい」
ふわりと身体が宙に持ち上がる感覚。
鼻腔に広がるいい匂いの中を、遊泳しているみたい。
「香月、さんきゅな」
「なにがです?」
「こいつ、昔のこと話していた時震えていたんだよ。すげぇ真っ青な顔でさ。だから正直……、俺こいつとは駄目だと思った。そう思っていたから、今まで言わずにいたけれど、それは鹿沼を口実にした俺の逃げだった」
「………」
「鹿沼に俺と切れ、そんな男には近づくなと言えたのに、お前……鹿沼の背中押しただろう。あいつ、穢れているとかなんとかお前にも聞いたみたいだし」
「あなたが全力で守ってきたから、今の彼女がある。それをすべて投げ捨てて、俺のところに来いとは言いたくない。それにあなたと友達をしようと思ったのは彼女の意志だ。俺はなにもしていない」
「はは……。本当にお前いい奴だよな。よいしょ、と。真下、お前太れよ。軽すぎ」
軋んだ音をたてて、なにかに降ろされる感覚。
暖かいものが身体の上にかけられる。