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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

「なあ香月」

「はい?」

「俺が言うのもなんだけど、鹿沼を前に導いてやって欲しい。俺は鹿沼の背中を守る。お前は鹿沼の手を引いて、一緒に未来に連れていってくれ。……本当は俺がしたかったけれどな……」

「結城さん……」

「俺、許されただけでもありがたいし、あいつが望む友達に戻らなきゃと思うんだ。ちょっと……時間はかかるだろうけど。簡単に忘れられるような片想いじゃねぇから。お前なら、よくわかると思うけど」

「………」

「それとな、香月。……お前が鹿沼のことを好きなら、鹿沼を守ろうとしているのなら、これから満月の夜……あいつと一緒に居てくれないか」

「……元よりそのつもりでした」

「そうか、だったら安心した。……俺、お前には感謝しているんだわ。会社もそう、鹿沼のこともそう。会社が持ちこたえていて、俺が鹿沼から憎まれないのは、お前が居たからだ」

「それは買いかぶりすぎで」

「いや。買いかぶりじゃねぇよ、本気だ」

「………」

「お前のこと信頼している。だから、聞きたい。本気で俺、社長出来ると思う?」

「自信ないんですか?」

「あるわけねぇだろう。俺はお前みたいにインテリでもねぇし、筋肉と口だけだ」

「それでいいじゃないですか」

「え?」

「俺はあなたほどの筋肉もないし、話術なんてさっぱりだ。別に学歴なんて関係ないと思いますが」

「……専務に、俺がいいと推薦した理由は?」

「見えたからです。この先、俺や鹿沼さんや真下さんら社員が笑って仕事をしているのが」

「………」

「社員が笑っていられるのは、あなたが作る会社しかない」

「………」

「俺、忍月で仕事が面白いと思ったことがなかった。仕事を真剣にとってくるということもなかった。与えられた仕事をただ黙々とこなしているだけ。それが仕事だと、会社だと思っていた。だけどシークレットムーンは違った。そして月代社長とはまた違うあなたが作る会社なら、皆が笑顔になれないはずはない」

「香月……」
 
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