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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
***
香月課長が出てきた場所から、衣里に支えられて泣きながらあたしが出てくれば、なにかあったのではないかと思うのは当然と言えば当然。
だけどその時のあたしは、罪悪感やらなんやら色々な感情がぐちゃぐちゃな状態だったから、なぜ結城が香月課長の胸ぐらを掴んで怒るのが理解出来ず、衣里より遅れて慌てて結城を止めることになった。
こんな怖い顔の結城、大学時代の……あたしの満月の症状が露見した、ホテルの部屋に殴り込んできた時以来だ。
三人の男達に抱かれていた乱れたあたしを見て、男達を殴りそしてもうこんなことをするなとあたしを怒り、そしてこれからは彼を使えと泣いた。
結城が一番傷を負ったような、痛そうな顔で。
あの時の凄惨な顔と、似ている気がした。
「鹿沼になにをした、なんで泣かせた!?」
「結城違うの、あたしがナーバスになりすぎて泣いただけ。それで香月課長は残業なしにしてくれたの。結城、ほら明日の前の日のあたしの状況、あんたならわかるでしょ!?」
やや事実の過程の順序が狂ったが、あたしは別になにかされたわけではない。香月課長に責任を求めるのは、ただの言いがかりにしか過ぎないんだ。
「明日の前の日の状況?」
衣里と課長が同時に反芻し、お互い顔を見渡して首を傾げている。
ああ、説明していない連中には不可思議な言葉かもしれないが、明日……勿論満月のことだが、あたしの興奮が加速して情緒不安定になりゆく状況を、結城なら知っているはずだ。
あたしが満月と言えなかったのは、満月に出会ってしまったために散々な目に遭わせてしまったらしい、香月課長への罪悪感からの無意識のなせる業。
事実を言ったところで、彼の9年は返ってこないことを感じ取ればこそ、真実を告げることに臆してしまう"逃げ"には変わらないが、結城はそれに思い当たってくれたらしい。