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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
「本当か!? 鹿沼、本当になにもされてないのか!?」
「うんうん! 結城に嘘つかないから! 本当になにもされてない。あたしが勝手に泣いただけ! 信じて、ね!?」
沈黙すること二秒。そして結城は香月課長から手を離すと、一歩下がり。
「すみませんでした――っ!!」
90度の角度まで、深々と頭を垂らして謝った。
なんだかそれを見て、人ごとになれないあたしと衣里もその横に並び、
「まぎらわしくてすみませんでした――っ!!」
と同じように頭を下げた。
そしてたっぷり十秒ほどして、香月課長が笑い出す。
「なにこの似たもの同期……くくっ、駄目だ、止まらない!! あははははははは」
あたし達三人は、意外にも笑い上戸だった香月課長が身をよじらせて、苦しそうに笑う様を、ぽかんとして見つめていた。
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そりゃあ勘違いが解けたのは、喜ばしいことですけれども。
結城の無礼に、香月課長は笑って許してくれましたけれども。
だけどさ、この展開なんなのだと思う?
ねぇ、一時間前のあたし!
「まあ、このワイン美味しいわ」
「凄いな、この肉……うまい!」
営業ふたりが歓声を上げたのは、洒落たビルの最上階、イタリアンレストラン。夜景が見える店だったため、結城がさりげなくカーテンがかかっている席を見つけてくれた。
あたしの家とは正反対の、都心に出たところにある、今人気の店だとかいうレストランに連れたのは、香月課長。
――いえ、誤解が解けたのならそれでいいです。あ、どうでしょう、仲直りとこれからの挨拶を兼ねて。美味しいワインと鶏肉が美味しいイタリアンのお店を知っているのですが、同期会に混ぜて頂けますか? 実は社長から、経費で飲み会をしろといわれているので、あなた達とどうかな、と。
――え、経費で肉!?
――え、経費で高級ワイン!?