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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
数があり中々終わらないあたしを手伝ってくれたのは、コンビニから調達した朝ご飯を持って戻って来た朱羽と木島くん。
質問事項を見た朱羽はあたしと衣里がなにをしたいのかすぐにわかったようで、木島くんに指示して、彼らも自分たちのボールペンを使って同じ質問を書き込んだ。
なんかいいね、こうやって言葉なくてもわかりあえるのって。
そこに木島くんもいるのが可笑しくてたまらないけど。だけど木島くんだって、そう遠くない未来に重鎮になる。しゅうしゅうしているけれど、小回り利くし、能力はある。
社長のところに居る結城に気づかれないように行う、すべての社員に参加させる無記名式アンケート。
結城を社長にという話を聞いていない他の社員は、あたしから渡された紙を手にして一体なんのことかとざわめきだした。
アンケート回答者は、大体答えにくい質問には、質問を肯定する方に靡くものだ。それをわかっていてこんな意地悪な質問をしたあたしは、書いたらあたしのところに持ってくるように皆に言った。
結城以外――。勿論アンケを作ったあたし達もだ。
そのすべてを回収したあたしが結城のところへ赴こうとすると、衣里が笑いながらその紙の山を奪った。
「私が、女々しく決断できないあいつに、発破をかけてくるわ。あんただとあいつ、甘えるから」
衣里なりの激励。それは頼もしいけれど。
「自信喪失しない程度にお願い」
「私はいつも結城に優しいよ? あはははは。じゃあ待ってて」
こうやってあたし達同期は、互いを励まし合ってきた。
それがなにも変わっていないことが、あたしの目頭を熱くさせた。
「ねぇ、主任」
木島くんが心配そうにあたしに質問してきた。
「あのアンケ、結城さんが社長になるのを反対だと書いていた奴ばかりだったら、どうします? いじけた結城さんが社長やりたくないと言ったら……」
あたしは笑って言った。
「ありえない。残ったうちの社員は全員、同じ方向を見つめているから。答えはひとつしかないよ。それを重荷に思うのか、背中を押されたと感じるかと結城次第。簡単なことじゃないから、思い切り悩んで欲しい。まあ猶予期間内でね」