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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
あたしと同期会しようと残業してくれていたくせに、非礼を許してくれた上に、給料前に上限なしの経費で誘惑する課長に負けた、薄情者の同期ふたり。
それでも外面は特にいい、営業の双璧。きっと向かい側からあたしを察して、困っていたらきっと助けてくれるに違いない。
「大丈夫。俺がいるなら、手出しさせない」
そう豪語した結城は――。
ああ、あんたがかぶりついている小悪魔(ディアボロ)風こんがり焼いたチキンおいしそうだね。その前にも牛やら豚やら食べてたけど、それで何皿め?
肉食の結城、さっきのあの怖い顔はどこへやら。人なつっこい笑みを浮かべて課長と談笑。お前は餌に手懐けられた犬か!
「陽菜、私が守ってあげるわ!」
そう、きりりと言った衣里は――。
三本目の赤ワインを空けてご機嫌。上気したお顔が綺麗ね。
同期会だったはずが、WEB部と営業部の飲み会に早変わり。
随分と和やかですこと。
課長、同期会に混ぜてくれとか言ったのに、今あなたが同期会みたいですよ。あたしはだんまり、黙々と濃厚ウニのスパゲティ。
別にあたしは課長と仲良しではないのに、課長は横向いてあたしに振る。
そりゃあ部下ですけれど、あなた資料室で怒ってましたよね? 結城に掴みかかられて、あたしが泣いていることを知りましたよね?
一見和やかに見えるこの場面が、好意だけで成り立っていないことくらい、あたしも感じる。
互いに相手を推し量るような、腹の探り合い。
だけどそうは簡単に見せないのは、さすがは鉄仮面と気鋭の営業部。
怖っ!
だけどまあ、あたしが課長と喋らなくてもふたりの話術と笑顔(の接待)をしてくれている間に、お財布が空にならずに英気を養えたぞ!
そう、明日は満月――。
飲み会が終わり、不安げに雲間に隠れている月を見上げた時、会計を終えて来た課長が、同じように空を見上げて、あたしに言った。
「結城さんとはおつきあいして何年目なんですか?」
若干、堅い声音で。
……?
あたしは、なにを言われたのかわからずに、結城と顔を見合わせた。
「ええと……、結城に会ったのは大学三年の時だから、八年目ですけど」
「八年もおつきあいなさっているんですか。ではご結婚も?」
「「は?」」
あたしと結城の声がハモった。