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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
「陽菜。今夜、七時に帝王ホテルだよ?」
「うん」
あたしからぎゅっと朱羽に抱きついた。
「社長が目覚めたから、スイートにする?」
どこまで金持ちなんだろう。
「い、いや、あのね今日はプレゼントであたしが……」
「俺が出すから、気にしないで?」
「でも誕生日……」
「あなたが居てくれるんでしょう?」
「そうであっても、帝王ホテル高いんだよ?」
「知ってるけど?」
「じゃあせめて割り勘で、誕生日祝いで今まで通りのランクで……」
スイートって何百万のような気がして、庶民はランクを下げる。それでも何十万な気がする。
「いや、割り勘じゃなくてやっぱりあたしが……」
親に返そうとしていた預金を下ろせば、きっと……。
「なんであなたの支払いや割り勘なんだよ。俺が出すに決まってるだろ」
「いや、だけど」
「だけどもなにもない!」
朱羽は、あたしの首元に埋めた顔をもぞもぞと動かして言う。
「男に、格好つけさせろよ。それとも俺、男としては頼りない?」
「……っ、そんなわけ……」
「どうしても気になるのなら、あなたの愛情で返してくれればいい。手料理だって、あれから全然作りにきてくれないし」
「だって今社長が」
「落ち着いたら、何度もうちに来て。……会社が終わっても、俺に会いに来て」
切なそうに求める声に、胸の奥が疼いてたまらなかった。