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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
「だけど朱羽くん、寂しっ子みたいなのに強がるから、いつも渉心配しててね。気づくとぶっ倒れているらしいし、いつもひとりで行動しているから、誰も朱羽くんの変調に気づいてくれないらしくて」
確かに、最初からぶっ倒れていた。
「だからね、陽菜ちゃんがあんな真夜中に朱羽くんの変調に気づいて探してくれていたから、陽菜ちゃんなら朱羽くんを任せられるねと、渉とそう言ってたんだよ」
「………」
「それとね、シークレットムーンが朱羽くんにとってよかったみたい。最初渉は心配していたんだ、忍月と違って人情的なところがあるから、ひとを信じられない朱羽くんは居心地悪くならないかって」
「居心地悪い?」
「うん、忍月は実力主義。皆で頑張ろうということはないんだ。出来て当たり前、出来ない方がおかしい。だから朱羽くんにとっては、マイナスのものをフォローというのは初めての経験だったのよ、しかも一匹狼には不得意なね」
「そうなんだ……」
「朱羽くんね、忍月に居た時と変わったよ。朱羽くんが自ら進んで、会社のためにとか誰かのためにとか動く姿、私は初めて見た。とりわけ結城くんと肩並べて笑いながら話している姿は、ちょっと感動したなあ。朱羽くん、友達がいなかったから。渉くらいだったんだよ、笑えるの。私だって渉の恋人と知ってからだって何年もかかったもん、笑ってくれるの。朱羽くん、すごく警戒するの。鉄仮面被りながらも、人間に傷つけられたことのある猫みたいに、フギーッというか感じで」
あの鉄仮面は、彼の防御なんだろう。
彼はなんでそこまで身構えるのだろう。
「多くの社員に混ざって、それで朱羽くんなりの考えを受け入れられて、朱羽くんが自由に動けている今の環境は、朱羽くんにとって人間的な意味においてすごくいいことだと私、思うんだ。だから私も、そういう意味でもシークレットムーンを無くしたくない」
「……うん、そうだね」