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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
「嫌だわ、うける~」
お腹を抱えるようにして、衣里が弾かれたように笑い出した。
まさか酔っているのか、ボトル三本程度で。
「や~だ。鹿沼の相手を結城だと思ったんだ~、冗談にきまってるじゃないですか、鹿沼も結城も私と同じ、悲しい独り身。独り身同期で~す」
そういえば今日衣里、あたしに彼氏がいるように言ってたんだっけ。
だけどなんだろう、このわざとらしい言い方。衣里はそんな演じたような言い方したことがなかったのに。
それになに、にやにやして課長と結城を見ているんだろう?
「え?」
反応したのは、課長だった。
いつもクールにきまっていたそのお姿が、ちょっと崩れた気がする。
「でも、結城さんと昨日……」
「え?」
「電話……、早く帰ったのも……」
あたしは少し考えこみ、そして逆に驚いて聞き返した。
「は? まさかあたしが急に帰ったのは、結城からの電話でデートするためだと思ったとか? あたしそこまで仕事に無責任じゃないですから」
「え……」
この顔は、本気で結城と付き合っていると思っていたようだ。
いや、そんなにあたしを見つめても、違うものは違いますから。
「嫌だな~、今の今までそんな風に思ってたんですか?」
あたしが困ったように笑っている横で、課長がどこかほっとしたような表情を見せた瞬間、唇を引き結んでいた結城が一歩前に出て、課長の耳元でなにか囁いた。
そしてにやりと笑って顔を引き戻すと同時に、課長の顔が強ばり翳った。
「そういうことなんで」
あたしの腰にさりげなく手を回した結城は、そのままあたしを引き寄せ、悪戯っ子のような笑みを見せた。