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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
「さあ、入ろう」
スイートではないと聞いていたはずだけれど、なんでドアを開けたら空間がこんなに広がっているんでしょう。
目の前は高級そうなベージュの革張りソファが長く続く応接セット。その右隣は、ビリヤード台とダーツが置いてあるプレイルーム。その端境に……お酒の瓶がずらりと並んで置いてある、ホームバーになっていて、格子状の棚に逆さまに吊られたグラスが、照明に反射してキラキラと輝いている。
ここはホテル? どこかのお店?
「すっご……。こんなホテル初めて」
「ここはセミスイートだ。スイートよりは小さいけれど、広くていいね。ちょっと俺、浴槽にお湯入れてくる。タオルは向こうかな」
朱羽が浴室を探しに行った。
格調高い、さすがは帝王ホテルのスイートもどき。
帝王ホテルのロゴが散りばめられたふっかふかの絨毯にしても調度にしてもシャンデリアにしても、真新しいというよりは、ワイン色基調の色合いからして、明治や大正時代の華族のお部屋と見間違うばかりの重厚さがある。
朱羽が消えた先――プレイルームとは反対となる応接間の左隣には、デザイン性のある装飾が施された白い壁や柱が隠すように、ドアくらいの広さの隙間が空いており、奥に繋がっているようだ。朱羽を追いかけるようにして、あたしも入ってみた。
二十畳くらいありそうな贅沢な空間の中央に……ダブルベッドというサイズだろうベッドが鎮座していた。
ここは寝室なのか。
ワイン色地に白色のホテルのロゴが散りばめられているカバーの掛け布団はふかふかそうで、枕元にはワイン色のクッションが沢山おいてある。
ダブルベッドを朱羽が指定したと思うと、ちょっと赤くなってしまった。
やがてかちゃりと音がして、寝室と繋がる半透明のガラス戸が開いて、そこから朱羽が出てきた。
「ここの中にトイレと浴室と洗面台が別々にあるみたいだ。今お湯を溜めている。温まって?」
ドアを開けると突き当たりが洗面台、左がトイレ、右がお風呂になっているらしい。どうやら朱羽と立っているこの洗面台のスペースが更衣スペースになっているようだ。