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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

「なに料理?」

「ああ、イタリアンにしたよ。本当は見栄はってフランス料理とかがいいかもしれないけれど、堅苦しいし緊張するだろう、作法とか」

「あたし行ったことないし、そんなとこ。朱羽は行ったことあるの?」

「渉さんに連れていって貰ったことがあってね。じゃあ、今度行ってみようか」

 朱羽はあたしを見て笑った。

 ……次があるんだ。

 そう思うと嬉しくなる。

「イタリアンということは、さっきのメニューイタリア語なの?」

「そうだね」

「イタリア語喋れるの!?」

「ちょっとね。渉さんほどは喋れないけど」

「ちょっとって言っても、メニューにあるのがなんの料理かも聞かないで、ちゃんとわかってあんなに流暢に発音したんでしょう!?」

「まあ、メニューくらいはわかるよ」

 ……絶対、このひとイタリア語堪能だ。宮坂専務が現地人のように喋れるだけで、比較対象がレベルが高すぎる。あたし何語かもわからなかったもの。

 ソムリエらしき黒服がやってきて、赤ワインを大きなグラスに注いだ。

 赤ワインらしいが、あたしの知る毒々しいほどの赤色や、どす黒い赤色ではなく、やや薄目の色だ。

「乾杯」

「お誕生日おめでとう、乾杯」

 飲みやすい、美味しい赤ワインだった。

 コンビニの赤ワインとも、衣里といく飲み放題の赤ワインとも違う。

「美味しい、これイタリアワインなの?」

「そう。バローロ・リゼルヴァ・モンフォルティーノと言うんだ。年代物にしてみたけど、やっぱり美味しいね」

 呪文のような単語が出てきたけれど、あたしはさっぱりだ。

 さらりと言われたけれど、あたしにはわかる。年代があるなんて、安物のワインではないんだろう。



 
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