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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
窓の外には、星が見えた。
そして……満月も。
「大丈夫? 無理しないでね」
「うん、大丈夫。ちょっとだけ身体むずむずする程度」
すると朱羽は、伏し目がちに笑った。
「それは後で、ちゃんと治してあげるよ」
……意味するところがわかって、あたしは赤くなりながら赤ワインを飲んだ。よかった、ここにお酒があって。
朱羽は身を乗り出すようにして、テーブルに組んだ両手の肘をついた。
「あなたと来れてよかった」
照明が彼の美貌を艶めかせる。
「ここに居てくれるのが、嬉しい」
朱羽が手を伸ばして、あたしの頬を撫でて綺麗に笑った。
「これからも居てね、俺の隣に」
暗さと照明の明るさが、あたしの心をじんわりとさせる。
二週間前、忘れていた朱羽が現われ正直最悪だと思った。
だけどそれから、少しずつ少しずつあたしの心に朱羽が住み着いた。
あたしは、頬にある朱羽の手の上にあたしの手を被せ、少し顔を傾かせた。
「この手、離さないでね……」
視線が絡む。
切ないくらいに朱羽が好きでたまらない。
朱羽に抱きつきたくてたまらない。
朱羽に……。
「はあ、間違えたかな、このレストラン」
朱羽が苦笑しながらあたしを見ている。
「え?」
彼は頬の手の向きを変え、あたしの手を握って指を絡ませた。
照明の下、ふたりの絡む手がやけに艶めかしい。
「あなたを抱きしめたい」
「……っ」
「この距離がもどかしいよ」
朱羽の指があたしの手を弄りながら持ち上げ、唇を落とした。
周囲の暗さも影響しているだろう。その一連の動きがあまりに神々しいほど美しくて、惚けてしまった。
「……あなたを抱きしめて、もっとキスしたい」
その感触と、挑むように見つめる朱羽の視線だけで、満月に疼く身体が限界だと甘い悲鳴を上げそうだ。
「あなたに触りたい」
熱い身体はじんじんして、彼に触られたくて仕方が無い。
だけど理性があるから、ここでは我慢するしかないのがやけに辛かった。