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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
あたしが居たコンビニでも、学生が多く訪れてその後特に万引きの被害が多かった。だから店長は、学生服を着た客が入ってきたら、目を光らせていて。
「店長は見ていなかったの? 朱羽が陥れられたことに」
「うん。店長の怒りは凄まじくて、俺は違うと言っているのに信じてくれない。……その時ね、ちょうど客もいなかったこともあるけれど、レジで立っていた店員さんがやってきて、俺がちゃんと会計をしていたと言ってくれたんだ。俺が要らないと言って受け取らなかったという、レシート持って」
「へぇ。だけど会計はしてないんでしょ?」
「そう。その店員さんは俺が店長に捕まっている間、先にレジを打って、自腹を切ってプリンを買ったレシートを作ってくれた。それで店長を退けてくれたんだ。自分は間違いなく俺がプリンを買った時にレジをしていたと」
朱羽の顔に柔らかな笑みが浮かべられていた。
「そのひとは俺から事情を聞いて、こんなことをさせる奴らとは友達じゃないから切れと言った。そのひとは奴らが俺のカバンに入れた瞬間は見ていなかったみたいだけれど、それでも俺はやっていないと信じてくれた。感動した俺がお金を払おうとすると、笑って言ったんだ」
"あたし、バルガー限定のプリン大好きなの。これ、お姉さんのおごり。ちゃんと代金は払っているから安心してね"
どきりとした。
その台詞に、ひっかかる記憶があったのだ。
訝るあたしに、朱羽が顔を見せる。
「あなただよ、陽菜。俺はあの満月の夜より半年以上も前から、あなたに会っていた。あの時、俺は笑うあなたに一目惚れをしてしまったんだ」
切なそうな表情で。
「え……」
「あの時のあなたの笑顔と優しさが忘れられなくて、会いたくてたまらなくて……、どうにか話すきっかけが欲しくて、あのバルガーでプリンを買いに行ってたんだ。学校と学校に内緒のアルバイトがあったから、時間が作れたらずっと」
「嘘!?」
ああ、だけど。朱羽はあたしにわざわざバルガーのプリンを買ってきてくれた。あたしひと言も、そこのプリンが好きだとは言っていなかったのに。
「本当だよ、これでもかとプリン買ってきた」