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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

 マティーニが三分の一くらいになった。

「マティーニ大丈夫? お酒強いの?」

「どうだろう。酒豪の渉さんに鍛えられたから、普通の男よりは弱くはないと思うけれど」

「ああ……専務は、社長に鍛えられてそうだよね。社長はお酒強いけど、衣里に潰されたから衣里が一番だ」

「凄いね、今度渉さんと飲ませてみたい」

 朱羽が持つカクテルが美味しそうに見えて、ちょっとねだってみた。

「あたしも味見していい? 朱羽が美味しそうに飲むから」

 朱羽は目を細めて笑いながら、優雅な仕草さでまたマティーニを飲んだ。

 その後をくれるのかと思い手を伸ばしたら、その手をぐいと引かれ腰をもっと近くに引き寄せられた。

 あたしがねだったマティーニはテーブルに置かれ、あたしの顎を手で摘まみ上げた朱羽は、上から艶めいた目を落としてきながら、口に含んだままだったらしいマティーニを、あたしの口の中に移してきた。

「んん……」

 熱い唇から流れ込む冷たい液体は、熱を帯びて。

 舌先が感じるマティーニの痺れるような強い味が、朱羽の唇の甘さに柔和され、どこまでも甘美なものとしてあたしの体内に浸透し、全身の細胞が奮え体が熱くなる。

 熱い液体をこくりと嚥下する際に、あたしの口端から流れた滴を朱羽の舌が舐め取りながら、あたしの口腔内を攪拌するかのようにねっとりと朱羽の舌が忍んできて、マティーニに入っていたオリーブが入ってくる。

「ぅんん……っ」

 だがそれを朱羽の舌に奪われ、気づいたらオリーブを取り合うように舌を絡ませあっている。

 しめやかになされる蜜事は、甘い吐息と淫靡な水音を奏でる。

 朱羽と心が通じた後のキスはいつも以上に情熱的で、顔にかかる朱羽の熱い吐息が、あたしが呑み込んだマティーニの匂いを放ち、朱羽自身の甘い匂いと溶け合いながら、官能的な香りを放つ。
 
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