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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
 

 ***


 満月の日は、朝早くから目覚めた。

 心身が興奮していることがわかり、精神安定剤の中でも弱めのリーゼを飲む。結局は薬で落ち着くはずがないのなら、せめて身体に優しいものを……ということで御堂医師が処方してくれたこの薬の効果は、夜になるにつれて無効化する。

 言うなれば仕事をするための気休めのようなものだが、あるのとないのとでは、日中の興奮度が違う。精神のお守りのようなもので飲んでいる。

 結城には、衣里の助言通りにLINEでハートマークを三つほど送ったら、
「(*ノωノ) イヤン」と返ってきた。まだ酔っ払ってるようだから、それだけで寝た。

 だけど会社に来てみれば珍しく朝から機嫌が悪そうで、衣里が被害にあったのか彼女も喧嘩腰だったけれど、ふたりとももう大人だから、仕事をしているのを見ている分には、いつもと変わりない。



 あたしは午前中、何件か得意先に課長を紹介するために来週のアポを取り、午後には木島くんの補佐に入る。課長もバタバタと動き回り、二階にいる方が多い。

 課長と肩を並んで仕事をするわけでもなく、あたしも電話応対やら木島くんの補佐やらで慌ただしかったけれど、満月の日はそうした方が気が紛れていい。

 それに結城も外に仕事を入れずに、見守ってくれているようだから、あたしも安心出来る。

 今日の満月、頼む。

 結城と目が会った時に両手を合せてそう念を送ったら、爆笑と衣里の気味悪がる声が聞こえた。

 結城、すまぬ。

 
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