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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
木島くんはなにかに取り憑かれたかのように頬がこけ、虚ろな表情で、課長から言われた仕事をこなしていた。
「木島くん、凄く進んでいるじゃないの。そんなに賢い子だったっけ!?」
不思議や不思議。いつもは、決して怠慢ではないけれど、じっくりやりすぎて時間がかかる木島くんが、三時にはあとふたつくらいを残すのみとなった。とは言っても、あたしや他のヘルプが入ってではあるけれど。
「主任、ひどいっす。俺はやれば出来るっ子です!」
それでもゴールが見えたことに木島くんは嬉しそうで、鼻息荒く威張った。
「じゃあ今までやろうとしていなかったのね?」
「う……っ」
今までそんな根性みせたことなかったのに。香月課長が言うとそうなの?
面白くないあたしは、休憩を兼ねて木島くんを突いた。
「ところで木島くん。朝、皆からも言われていたけれど、杏奈と三日連続同じ服じゃない?」
「ぎっく~」
また口からおかしな擬音語が出た。
「もうさ、杏奈と出来ちゃっていること、隠さなくてもいいじゃない。別にここ、社内恋愛禁止されているわけでもないし」
「違うっす」
「なにが違うよ、目にすごいクマよ。それに腰も辛そう。なに、杏奈また激しかったの?」
杏奈はここ最近サーバー室に籠もって作業をしている。サーバー室を顎で促しにやにやして尋ねると、木島くんがげんなりとした顔で返事する。
「そうっす。三上さんかなり激しくて注文が多いから……って、違うっす! 変な意味じゃないっす!」
なんでそこまで隠すのだろうか。
その時あたしの内線が鳴った。
『カワウソ~、沼においで』
相手は月代社長で、つまり、社長室に来てということだった。
二階に上がって、秘書室の受付に顔を出せば、衣里曰く、二週間前あたりに結城にふられたらしい三橋さんが、なにやらあたしを睨み付けるようにして、社長室を無言にて手で示した。
今月会うのはこれが最初だけれど、前回まではにこにこ応対されていたのを思い出せば、この変貌はなんなのか。
とりあえず社長に会うのが先だと、社長室をノックすれば、香月課長も居た。