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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
「おお、愛しのカワウソ~」
今日はダークグリーンのスーツですか。少し浅黒い顔に色つきスーツ。本当に無色のスーツは着てこないよね、あたしの社長は。
「お呼びでしょうか、社長」
「カワウソ~」
立ち上がり、香月課長の前で両手を広げた。その胸に飛び込んで来いというようにちょっと前屈みになりながら。
「社長、なんでしょう?」
態度を変えずににっこり笑い、線を引いたあたしに、社長が拗ねた。
「昔のカワウソは、シャチョ~!!と飛びついてきてくれたのに。今のカワウソは、捕獲させて貰えない!」
「あたしはもう、28歳なんですが。なにもわからず、ノリだけでしていた新人とは違いますので」
びしっと言い放つが、それで終わる社長ではない。
「だけど鹿沼、酔っ払ったら僕に抱きついてくれるじゃない」
香月課長の冷たい視線が突き刺さる。
もうやめてよ、またあたしは、常時見境なく男に盛るアバズレだと思われてしまうじゃないの。あの目に凍る、凍っちゃうから!!
あたしは、コホンと席をしてその言葉を無視した。
「それで? 香月課長となにか?」
「おお、残業昨日で終わったんだって? 今香月から報告受けて、お前に随分世話になったというから、まずお前にご褒美」
社長があたしの手になにか握らせた。
……いちごみるくキャンディー1個だった。
まぁ、いいけどさ。あたしは三分の一の労力で、あとは課長が事務まで自力に覚えてたし。こんな程度くらいしかお世話していないけど。
「それともう香月が慌てて仕事を覚えなくていいのなら、今日全社員で香月の歓迎会をしようと思ってな。お前は香月直属だから、幹事やってくれ」
「はい……ええええ!? 今日ですか!?」
荒れ狂う満月の夜に、飲み会……しかも幹事ならずっといなければならないじゃないか。なにが嬉しくてあたしが変貌する様を、全社員に見せねばならないんだ。