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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
朱羽はふっと笑った。
「……ありがとう陽菜。俺が挫けそうになった時、傍で俺の手を引いてね」
朱羽は言わない。
あたしがなにを言おうとしているのか悟っているくせに、曖昧にしてぼかす。……それでも、挫けそうになりそうな時があるかもしれないと臭わせた。ならば、話してくれる時を願って。
「朱羽、なにがあろうとも大好きだよ?」
「俺の方こそ、……愛してるよ」
朱羽は絶対、あたしが好きだと言ったら、それ以上の言葉で返そうとする。むきになっているようで、それに笑いが込み上げるけれど、それ以上に朱羽への愛おしさが増して切なくなった。
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「じゃあ行こうか」
朱羽が差し出した手を握り、あたしは部屋を振り返る。
「どうした? 忘れ物?」
「ううん、そうじゃなくて。……この部屋を後にするのが、なにか悲しくて」
朱羽は笑いながらあたしに言う。
「これからはもっと愛し合えるよ? 過去ではなく、未来を向いて行こう。ずっと一緒なんだから」
そうやって、朱羽はいつもあたしに未来に向かせる。
その未来に、居てくれてるならなにも不安に思うことはない。
「……そうだね」
あたし達は微笑みあいながら、何度も何度も愛し合った部屋を後にした。
……精算凄いことになっているんじゃないだろうか。
現実に返れば、現実問題があたしを焦らせる。
朱羽はフロントにあたしを立たせようとせず、行っても追い返されて、結局幾らになったのかわからない。しかも小さいながらも酒まで飲んだ。
「お待たせ」
内ポケットに財布を入れながら、朱羽が戻って来た。
「お幾らで……」
「……大丈夫だよ、これくらいは。俺は忍月でも働いていたのあまり使ってなかったから。それに全然安い安い」
「でも……」
朱羽は笑った。
「If I get night to love each other with you, I don't mind to pay the large sum of money.
(あなたと愛し合うための夜が手に入るなら、どんなにお金をかけても構わない)」